#2.箱根駅伝往路

1月2日、3日と日本全国が注目するお正月の風物詩、箱根駅伝が行われました。遅くはなりましたが、2回に分けて感想を書きます。

エントリーメンバー

第98回箱根駅伝に臨む東洋大学のエントリーメンバー(12/29時点)は以下の通りです。

1区 児玉悠輔 選手 6区 九嶋恵舜 選手

2区 松山和希 選手 7区 梅崎蓮  選手

3区 大沼翼  選手 8区 蝦夷森章太選手

4区 木本大地 選手 9区 柏優吾  選手

5区 宮下隼人 選手  10区 吉田周    選手

補欠  清野太雅 選手          石田洸介 選手

         前田義弘 選手             奥山輝  選手

        佐藤真優 選手              村上太一 選手

このうち3区に佐藤選手、9区に前田選手、10区に清野選手が当日変更で入りました。

私は、3区に佐藤選手4区に石田選手、8区に前田選手10区に清野選手との予想をしていましたが、石田選手は距離不安からの欠場となり、ゴールデンルーキーの箱根デビューはお預けとなりました。

 

以下、各区間の感想です。

1区 区間12位 1時間2分07秒

ハイペースが予想された今年の1区、スターターとしての地位を確立しつつある児玉選手ですが、相対的な持ちタイムの悪さとハイペースの経験不足という点から私はかなり不安でした。レースが始まると中央吉居選手が想像以上のハイペースを作っていきます。児玉選手は基本集団後方に位置することが多く、後方というのはハイペースでは前がペースを上げた時に出遅れやすい不利な位置なのです。しかしこの時児玉選手は果敢に前に行き、2番手3番手の位置で食らいついていきますが、吉居選手は遂に5km過ぎから単独走に。何があったか確認できませんでしたが児玉選手は一気に2位集団最後方へ。いつ振り落とされてもおかしくないこの状況。「あー、終わった」私はそう思いました。ところが、さすがは高校時代は世代トップクラスだった選手です。16km過ぎに2位集団もペースが上がり、かなり縦長になった展開でスッと前方へ。彼より力のある創価や早稲田が脱落していく中で17km手前までよく粘りました。トップから遅れること1分27秒後、13番目での襷渡しとなりました。期待としてはもう少し前で渡して欲しかった面もありますが、優勝候補の駒澤大学と48秒差ですので、スターターとしての役割は十二分に果たしてくれたと思います。これまでの全ての駅伝で1区を走ってきたというまさしく1区のスペシャリストに、今年も期待せずにはいられません。

 

2区 区間5位 1時間7分02秒

私が松山選手に対して心配していたのは、出走できるかどうかという点でした。昨年は怪我に苦しみ11月の全日本大学駅伝でも区間13位と、前回大会の鮮烈な箱根デビューのようには上手くいかない1年だったと思います。そのため、調子が上がらず回避という可能性もあるのではと思っていました。が、一方で出走できれば何も心配していませんでした。さあ、無事出走が叶った松山選手ですが、少し遅れてスタートした留学生ランナーに着いていく順調な滑り出し。ところが、権太坂では段々と前に離される様子がカメラに映ります。「あー、終わったか」。またもや私はそう思いましたが、数々の名ランナーが悲鳴を上げてきたラスト3kmに待ち受ける通称"戸塚の壁"で驚異的な追い上げを見せ、区間5位(日本人2位)の大健闘。順位を12位から8位に上げます。レース後のコメントで、どうやらこの一連の走りは作戦通りだった様。昨年は権太坂から仕掛け終盤失速してしまった(それでもラスト3kmのラップタイムは日本人最速のはず)ため、権太坂では抑えて走り残り5kmからペースを上げるプランだったそうです。クレバーな走りを披露した鉄紺の若きエースの活躍が楽しみです。

 

3区 区間8位 1時間2分46秒

1区、2区とレース前の不安点を述べてきた私ですが、この区間では一転して期待で溢れていました。佐藤選手は昨年度の全日本大学駅伝で松山選手と同時にデビューし、当時1年生ながらエース区間の1つを任されるなど、監督からも非常に期待されていたからです。加えて、前回の箱根駅伝は補欠に入りましたが怪我をしてしまい出走できずということで、1年間この時を待っていました。彼は何といってもイケメンです。顔は大事ですよ。男女問わずイケメンは好きですからね。とまあ話がズレましたが、彼は東洋大牛久高校の出身、つまり、附属上がりです。東洋大牛久は全国大会にも出たことのある強豪校ですが、附属から安定的に選手が来てくれるようになると戦力の充実に繋がるため、附属から来た選手が活躍をすることは、表面的なチームの結果以外にも大きな利点があると私は考えています。1回1回のレースが選手の集大成であり、同時に高校生へのアピールの場になるからこそ、附属出身の彼が主要区間を走ることが私はとても嬉しかったのです。結果から言うと、この区間はテレビに映らなかったのでどうであったかは何とも言えません。仕方ないですね、1位争いはとても面白かったですから。HPで見ることができる箱根駅伝の記録速報によると、戸塚で襷を受け取った後、國學院に一瞬で置いていかれますが藤沢は1つ順位を上げて通過。続く茅ヶ崎では1つ順位を下げてしまうものの湘南大橋で一気に順位を2つ上げ、トップから2分21秒差の6位で"牛久の先輩"に後を託します。直後、不運にも嘔吐する場面が映ってしまいましたが、吐くほど絞り出した21.4kmに心から敬意を示します。クールに見えて内に熱い闘志を秘める鉄紺エリートは学年のまとめ役。今後、そんな彼が競技内外で躍動する姿を観ることができたらどんなに嬉しいでしょうか。

 

4区 区間18位 1時間4分17秒

さあ、同様に牛久出身の木本選手でしたが、ほろ苦い駅伝デビューとなりました。10km手前ではまずまずの走り。異変が起きたのは10km過ぎです。駒澤花尾選手に追い付くも、後ろから区間賞受賞者の創価嶋津選手を筆頭に大集団がやってきます。嫌な予感はしていました。木本選手は特別ペースが良かったわけではないものの、20秒以上前にいた花尾選手に10km足らずで追い付いてしまい、後続はレベルの違うスピード感で迫ってきます。木本選手は大学の駅伝や持ちタイムでも特に実績がないのに対して、花尾選手は11月の全日本大学駅伝でもアンカーとしてゴールテープを切るなど、本来は区間賞争いをしてもおかしくない選手です。花尾選手は集団が来ることでリズムを取り戻し着いていくことができますが、木本選手は力通りに走ってしまったが故にかえって不利な立場に置かれてしまったように思います。結果的に順位を6つ下げ、12位での襷渡しとなりました。木本選手を4区に起用したことの考察については、復路まで終わってからの方がスムーズですのでそちらに回すこととしますが、高校時代、県駅伝でも区間賞を獲得した実力者の復活を首を長くして待っています。

 

5区 区間8位 1時間12分23秒

正に雪辱を期す王者として臨んだ最後の箱根5区は、苦しいラストランとなりました。現区間記録保持者として区間賞の奪還、そして事実的な区間記録とされる1時間9分12秒の更新を目標に掲げた今大会、快調な滑り出しとはなりませんでした。順位は上げているものの、区間新記録どころか函嶺洞門、大平台、小涌園前と半分を過ぎても区間中位と、彼にしてみれば不本意だったことでしょう。ド素人の私には分かりませんが、足が上手く動かず、重い感覚があったそうです。しかし、しっかりと順位をシード圏内の9位まで上げ、復路に望みを託してくれました。思い返せば2年前の箱根駅伝、今回同様4区終了時点でシード圏外だったチームを救ったのは宮下選手でした。それからというもの、チームの最終走者には常に彼がいました。優勝すれば格別に気持ち良いアンカーだとは思いますが、負けるときは誰より無念さを痛感することでしょう。2年前の箱根以降、いつかこの人が優勝のゴールテープを切るところを観たいなとずっと思っていました。遂には叶わなかったわけですが...。遡ること昨年11月の全日本大学駅伝、走り始めた時は既にシード圏と1分近くの差がありました。テーピングでぐるぐる巻きの脚で苦しみながら走り抜くも、結果はシード圏外の10位。フィニッシュと同時に泣き崩れる姿を見るのは非常に辛かったです。もちろん箱根の優勝は観たかった、しかし、シード権を落としてこれ以上彼に十字架を背負わせることの方が私は何十倍も嫌でした。優勝できなかったのは残念ですが、シード権を取れた安心感でそこまで引きずることもない、と言ったところでしょうか。入学当初は無名ながら、チームのエースそして主将へと上り詰めた稀有な選手。山上りで色んな景色を見てきた彼が、いつか山頂で絶好の眺めを見られることを祈っています。今まで有難うございました。

 

往路まとめ

今年は、様々な感情になるジェットコースターのような往路でした。正直言って、今年はかなり諦めていたというか、シード落ちも本気で覚悟していました。それほどに全日本大学駅伝での大敗は深刻なもののように思えたからです。また、石田選手の起用を見送ったこと、これも私にとっては絶望そのものでした。彼ほどの選手が復路に回るわけがなく、往路での出場機会がないということは今回の箱根駅伝の回避宣言に等しく、出雲、全日本と彼の走りに引っ張られていたようにも見えたこの1年ですから、彼抜きでやっていけるのかと不安でした。しかし蓋を開けてみれば1区は何よりも面白い展開で、しっかりと流れに乗ることができ、怪我で苦しんだ次期エースが2区で昨年を上回る力走を見せ、続く3区も昨年の悔しさを晴らすかのような魂の走りを見せてくれました。4区は結果こそ奮わなかったですが、まだ3年生ということでリベンジを見るという新たな楽しみも生まれました。5区はとにかくこの大会に間に合って良かった、最後まで走り抜けるところを観ることができ、非常に嬉しく思いました。復路まで一気に書くと、新参者のくせに生意気な文章量になりますので、今回はここらへんで。有難うございました。